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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
うなだれるぼくに、陛下は続けた。
「翔龍は予の古くからの友だ。浅からぬ仲であるのは真実だが、そこに誰かの承認や干渉を受けねばならぬ筋合いはない。なぜなら予は皇帝であり、何をしても許される権限を有しているからだ。違うか?」
「仰せの通りにございます、陛下」
「なのにおまえは、予の面前で翔龍に悋気を起こし、予に腹を立てた。わかるか。おまえは、予の主のように振る舞ったのだ」
「そんな、まさか……」
ぼくは愕然とした。
ぼくは翔龍を妬んだ。でもそれは同時に、陛下に対し不満を募らせることでもあったのだ。
忠誠を誓った相手なのに。真心をささげると決めた相手なのに。ぼくは僭越にも腹を立て、陛下を蔑ろにしてしまった…。
ここにきて、陛下が「不愉快だ」と言った本意をようやく理解し、ぼくは打ちのめされた。