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~花の玉手匣~
第2章 星降る夜のわがまま姫
「星祭りはその伝説にちなんだ3年に一度のお祭りです。露店の美食に賑やかな大道芸。歌と踊りが三日三晩続くのでございます。しかし圧巻なのは祭りの初夜、数千の人々が灯籠を持ち寄り一斉に夜空へ放つ瞬間です」
そこで凜凜は目を細めた。
「それは美しく、幻想的な光景なのです…」
「すごーい!」
美紅姫の目が輝いた。
「ねえっ、凜凜。あたしも行きたい。あたしも連れてって!」
「えっ……」
凜凜が我に返り、頬を引きつらせた。
「そ、それは…呂栢さまにお聞きいたしませんと……わたくしの一存で姫さまをお連れすることはいたしかねますゆえ…」
「じゃあ呂栢に連れてってもらう! ね、呂栢はどこ?」
「呂栢さまは准后さまのお部屋にいらっしゃるかと……でも……あっ、姫さまお待ちくださいませ!」
凜凜は自分の発言が美紅姫をそそのかしてしまったことに狼狽した。
姫の躾係である呂栢に聞くまでもなく、その日いきなり思い立って後宮を出ることなど、たとえ皇女さまでも無理なのだ。
しかし美紅姫は目をキラキラさせて駆け出してしまった。