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~花の玉手匣~
第2章  星降る夜のわがまま姫

「呂栢! 呂栢!!」

可愛い姫が息せき切って駆け込んできたとき、玉蘭は呂栢と黒檀の卓を囲んでいた。

ふたりの間では、皇子が子供用の椅子に座っている。

今年で三才になる彼は父や叔父によく似た利発さを瞳にたたえ、呂栢の指導で論語を誦じていた。

そんな息子を、玉蘭は鼻高い面持ちで見つめていた。

そして同じ微笑をゆったりと娘にも向けた。

「美紅姫、そんなに急いでどうしたの。お昼寝は、よく眠れた?」

「あのね、あたし――」

そのとき突然、それまで溌剌としていた美紅姫の目が色を失なった。



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