この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~花の玉手匣~
第2章 星降る夜のわがまま姫
美紅姫はしばし「じっ」と固まったあと、無表情のまま呂栢に駆け寄った。
「あのね、呂栢。お祭りに行こ、お祭りに行きたい、お祭りに連れてって」
袖をつかんでまくしたてる美紅姫に、呂栢は苦笑を浮かべた。
「いかがなさいましたか、姫さま。まずはお母上さまにご挨拶をなさってください」
しかし美紅姫は呂栢の腕に絡みつき、上目遣いでおねだりを続ける。
「ねえ、早く行こうよ。お祭り終わっちゃう! 灯籠、見たいの!」
「美紅姫、少し落ち着いて。お祭りって、何のことなの?」
玉蘭が横から優しく訊ねた。
ところが美紅姫は玉蘭の方へ顔も向けずに声を張った。
「だから都のお祭りだってば!」