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~花の玉手匣~
第2章  星降る夜のわがまま姫

酉の刻過ぎ――

夕日で橙色に染まった石畳みを北門に向かって歩きながら、美紅姫は手をつないだ呂栢を見上げ、くすくす笑った。

「うふふ、呂栢のお髭、おもしろ~い」

呂栢もまた、白髭を着けて変装していた。

呂栢は立ち止まり、膝を曲げて美紅姫と目線を合わせた。

まじめな顔だ。

「よろしいですか、姫さま…いえ“ヨンミ”。みどもは呂栢ではありません。“リ・セイ”です」

「――うん。わかってるわ、リ・セイ」

美紅姫も、まじめな顔で応えた。

北門はすぐそこだ。

心臓がドキドキしてきた。緊張で心なしか頬が強ばる。

ふと、呂栢が美紅姫の頭に手を置いた。

「外に出ましたら、呂栢とお呼びになってかまいません。門をくぐる時だけ、お気をつけくださいませ」

にっこり笑う。

つられて美紅姫も弛緩した。



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