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~花の玉手匣~
第2章 星降る夜のわがまま姫
――――――…
腹の底から笑いがこみあげる。
迷路のような胡同を抜け、人々でごったがえす都大路に出たところで、ようやく美紅姫は
「やった~!」
両手を上げて飛びはねた。
「ねっ、ねっ、ほんとに出てきちゃったねっ!」
北門を衛る武官の渋顔を思い出す。
名前を聞かれ、澄ました声で「ヨンミです」と答えたときのあのスリル。
どうやって調達したのか呂栢はきちんとふたりぶんの手形を持っていて、担当官はそれをしげしげと検め、美紅姫と呂栢の顔を舐めるように見比べたあと「出宮許可」の朱印をポン、ポンと捺してくれた。
そのとき担当官と呂栢がかすかに目配せし合っていたことには、美紅姫は気づかなかった。