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~花の玉手匣~
第2章 星降る夜のわがまま姫
「迷子になりませぬよう、決して呂栢の手を放してはなりませんよ、姫さま」
「うん、わかってる」
ぎゅー、っと呂栢の手を握りしめ、それから美紅姫は改めて周囲を見回した。
都に住む人、祭りのために田舎から出て来た人、露店を広げる人に楽器を奏でる人…
老若男女がひしめき合い、にぎやかで、ムンムンとした熱気にあふれている。
みんなニコニコ顔だ。
そして、香り。
客を引き寄せる焼き鳥や点心の匂いに、酒場から漂う焼酎や煙草の臭い、胡同ぞいに建ち並ぶ家々は気どったところのない生活臭を発している。
後宮では決して有り得ない、しっちゃかめっちゃかな空気に美紅姫の五感はビンビン刺激された。