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~花の玉手匣~
第5章  蒼い牙に抱かれて

雪まじりの雨が降りしきる日の午後、ぼくは独り、かじかむ手で大量の下衣を洗濯していた。すべて皇城に勤める女官や内官たちの汚れ物だ。

その日の洗濯係はぼくを含めて10人いた。

しかしあまりの寒さに(洗濯場は吹き放しの四阿みたいなところだ)、9人は最年少のぼくにすべてを押し付け詰所に避難してしまった。今ごろみんなで火鉢に当たっているはずだ。

ぼくは無性に悲しくなって、けれど仕事を放棄するわけにもいかなくて(乾燥係が受け取りに来る時間までに洗濯が終わっていないと、総監に告げ口されて罰を受ける羽目になる)、いつの間にか涙を流しながら必死に手を動かしていた。



「なぜ泣いている」

深みのある低い声が降ってきたのはそんな時だった。



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