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~花の玉手匣~
第5章  蒼い牙に抱かれて

声の主は柱廊の基壇に立ってぼくを見下ろしていた。

紫の繍衣、頭には金の礼冠。

そして凛とした長身と彫りの深い容貌。

神々しいほどの存在感に、ぼくの心臓は止まりそうになった。

だってその人は、ぼくみたいな皇城の最下層でネズミのように生きる人間には、遠目に小さく後ろ姿のみ拝するのもやっとなくらいの雲上人だったから。

そう、つまり――

「そこの下臈、頭が高いぞ。陛下に礼を尽くさぬか!」

背後に従う内官の尊大な恫喝で、ぼくは我にかえった。

そう。

つまり、目の前に立つ貴人こそ皇城のあるじ、帝国の統治者、皇帝陛下だったのだ。



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