この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「陛下が御酒の給仕役におまえをお呼びなのだ」
内官は低い声で告げた。
ぼくは耳を疑った。下働きの雑用係にすぎないぼくに、皇帝陛下直々のお召しがあるなど考えたこともなかった。
「よいか。いかなる思し召しがあろうとも、おまえは御意のままに従うのだ。そして――」
ぼくの困惑もよそに、内官は訓示を続けた。
「これからおまえの身に起こること、見ること、聞くこと……すべて他言無用を肝に銘じろ。一言たりとも他者に…おまえ自身以外の者に話してはならぬ。もちろんこのわたしにもだ。よいか、一言たりとも口に上らせてはならぬのだ。万が一にも漏らすようなことがあれば……」
そこで内官は目を光らせ、懐の短刀をちらりと見せた。
ぼくはゴクリと唾を呑み込み、慎重に頷いた。