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~花の玉手匣~
第5章  蒼い牙に抱かれて

鳳凰殿は皇城の中で最も巨大で壮麗な、陛下のお住まいである。

黄金瓦の大屋根は夜陰に輝き、浮き彫りの龍が巨壁を泳いでいる。

門や庭を警護する武官、行き交う女官、迷路のような歩廊の各所で待機する内官たち…。

誰もこちらに興味はなさそうだけど、ぼくは身を縮こませながら歩廊を歩いていた。

手には御酒の白瓶を、決して落とすまいと必死に抱えて。

やがて行き着いたのは陛下のご寝所だった。

「陛下。思し召しの御酒をお持ちいたしました」

案内役の内官が口上を述べると、

「入れ」

玲瓏たる声が返ってきた。



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