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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
広々とした室内には金、銀、錦を凝らした趣味のよい調度品が据えられ、四方に配された燭台は幻想的な影模様を作り出していた。
そして陛下は中央の寝台に腰を下ろし、既に手酌で酒をしたためていた。
礼冠を外し、くつろいだ羅衣に夜袿を羽織っている。
うっすらと頬に浮かべる微笑が妙に淫靡で、ぼくの胸はドキドキした。
「近う寄れ」
陛下は盃をかかげて促した。
内官がぼくを振り返り口パクで「お酌を」と促した。
ぼくは緊張しながら進み出た。
高貴な方へのお酌など初めての経験だ。おそるおそる白瓶を傾ける。
「……あっ」
案の定、手元が狂い、ぼくは血の気が引いた。
ぼくが盛大にこぼした酒のせいで、陛下の袖口はグッショリと濡れてしまっていた。