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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
ぼくは陛下の左腿に完全に座る形になり、当惑していた。
ここに連れてきてくれた内官に視線を向けるも、彼は目を伏せていてなんの助け船も出してくれない。それどころか、
「大儀であった。宿直(とのい)はこの者に任せるゆえ、そなたは退がれ」
という陛下の命令に従い、寝所を退出してしまった。
扉がきっちり閉められる。
ぼくはどうなってしまうのだろう。事の成り行きにドキマギする。
「震えているのか。予が怖いか?」
ぼくは首を横に振った。
「寒いか?」
さらに首を横に振った。
「こんなに手を傷めて…」
陛下がぼくの手を取った。水仕事でかなりガサガサに荒れている。恥ずかしかった。
陛下は盃を卓に置き、抽斗から蛤型の入れ物を取り出した。
中には白い膏薬が詰まっていて、それをぼくの手に塗りつけてくれた。