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堕散る(おちる)
第25章 step25 十九段目…卵
コンコン…

「こんにちは。」

「おお、ルリ、昨日はありがとうな。」

何にありがとうなのかわからずキョトンとしてしまう。お礼を言わなきゃいけないのは、旅行に連れていってもらったワタシの方だ。

「え…」

間延びした返事に振り向いたハルトは、両手でしっかりと卵を包んでいた。

「卵のカイロ…」

「え、あ、はい。」

「寝ないで卵の番をしようと思ったけど、寝ぼけて潰してしまうのも心配でカイロが役立ったよ。
朝もちゃんと温かいままだった。

そしてこれがあるから、もう大丈夫。」

机に乗っているのは保温器のような箱。

だけど、そこには入れずにハルトは手で包んでいる。

「使わないんですか?」

「雌鳥が体を張って温めているんだ。すべて機械任せじゃ、卵が可哀想だろう?」

「は、はい。」

「触ってみて?」

ハルトに卵を手渡される卵に『上』と書かれていた。

「温かいです。最初と同じ温かさです。何で上って書いてるんですか?」

「そっちが上だから…
勝手にひっくり返されたら卵もびっくりするだろう。」

「あ、あは…そうですね。」
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