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堕散る(おちる)
第27章 step27 二十一段目…初夏
手伝いの際に冷蔵庫にしまった箱を出す。

「珈琲もすっかり冷めてしまったし、紅茶にしてよろしいかしら?」

「はい。」

母がそろそろ立ち上がり、キッチンに向かう。

ワタシも後を追ってキッチンに行った。

「オレンジペコでいいかしらね。」

母はさっきのように浮かれたこそこそ話はしてこなかった。

むしろ今は何も聞きたくないといったオーラを感じた。

オレンジの香りが広がり気分も爽やかになる。

リビングに戻るとハルトがケーキの箱を開けて待っていた。

「お母さんはどちらになさいますか?」

「まあ、どれも素敵ねぇ。」

ハルトが店の宣伝文句を一つ一つ説明する。

「チーズスフレをいただこうかしら…」

ハルトのケーキ作戦は成功で、母の目はケーキに囚われた。

ワタシがベリーケーキ、ハルトがチョコレートケーキを選び、残った箱を私は冷蔵庫にしまう。

「明日は反対のを召し上がってくださいね。」

「あらまぁ…そんなに沢山…」

「いや、ルリが一つに絞れなかっただけですから…」

「全く、小さいころ父親が甘やかしてね。
選べないなら全部買ってやるって…
一人になって贅沢出来なくなったら、選ぶのにますます…
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