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その瞳に…
第29章 大人と子供
 「まずは、自分がまだ子供だと認める事が大事なんだ。出来る事と出来ない事を知る事がね。そうすれば、これから自分に何が足りないか解り、その足りない部分を補う為に努力が出来る」

 大河の言葉一つ一つが体中を駆け巡り、ドキドキする鼓動を抑える様に、舞奈は胸元をぎゅっと強く握る。

 「そうすれば、君はさらに魅力的な大人になれる。僕が大人なのは、君より少しだけ先に生まれただけだ。そして、大人はね、子供が大人になる為に手助けするのは当たり前なんだ。それが、大切な人ならなおさらね。だから、君は僕らの手助けを素直に受け取りなさい。皆、君が素敵な女性になるのを楽しみ待っているんだから。それすらも、気が引けると言うのならば、そんな女性になり、皆にそこから恩返しをしていけばいい」

 言葉も無く、ただ瞳をキラキラと輝かせながら見つめる舞奈に、大河は飛び切りの笑顔を向ける。

「本当なら、まだ子供のまま何も知らない君を僕がもう少し自分勝手に育てたいと思っていたんだけどね。君自身がそれに気がついてしまったのなら、今度は大人になる為に成長する君を、手助けし、育てていく事にするよ」

 そっと、大河は舞奈の頬を両手で包み込む。

 「さあ、舞奈見せてごらん。君がこれからどんな素敵な大人になるか」

 「・・・はい」

 認めよう、と舞奈は思った。

 無力で、子供な自分を。

 受け入れよう、そう思った。

 これから経験する、全ての事を。

 そうして、大河の為に、大河がもっと魅力的だと思ってくれる自分になろうと。

 勉強し、経験し、色々な世界を見て、大河の横にいれる相応しい女性になろう。

 それは、全て自分のためでもあり、大河の為にもなるのだから、と。

 繋がれた鎖が外れる訳じゃない。ただ、鎖が伸びるだけ。

 最後には、ちゃんと大河の元に戻ってくるのだから。

 きっと、拗ねるのも嫉妬も大人になる為に必要なものだ。

 舞奈は、つき物が落ちたように、心落ち着いた微笑みを浮かべ、ゆっくりと大河に口付けをした。
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