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その瞳に…
第29章 大人と子供
 「君はこれから、進学もするし、就職もする。その中で色々な人と出会い、もしかしたら僕なんかにもう目を向けなくなってしまうかもしれない」

 その言葉に、舞奈はバっと体を起こし、大河の瞳を真っ直ぐに見つめた。

 「そんな事ありません!私はずっとこれからも、先生だけを見ていきたいんです!!」

 悲しみを含んだ瞳で怒る舞奈に、大河は優しく微笑む。

 「大丈夫だよ。もしそうなっても、僕はまた君を僕のものにするだけだから。けして誰にも君を渡したくないからね」

 そう囁きながら、大河はそっと唇に軽いキスをする。

 ゆっくりと離れる唇と共に、舞奈と大河の瞳が交差する。

 「ただね、舞奈。僕はそんな色々な世界を見て、魅力的になった君を、さらに僕の手で魅力的に育ててみたい、そう思ってるから僕は君を閉じ込めたりしないんだ」

 「え・・・?」

 「大人になるとね、色々な柵が増えて、中々自分を成長させる事が出来ないんだ。それこそ、性格だってもう変える事が難しくなる」

 「そう、なんですか・・・?」

 「そうだよ」

 大河はコツンと自分のおでこを、舞奈のおでこに当てる。

 「けれど、君はまだこれからなんだ。今自分が子供で、無力だと君は言っていたけれど。その年の子はね、それを認めたくなんだ。子供と大人の境界線に立っているからね。とても危うい境界線に・・・」

 真剣な眼差しで見つめる大河の瞳に、少しだけ不安げな表情の舞奈が写る。

 舞奈は、それでも大河の瞳から、目をそらす事はしなかった。

 きっと、この後紡がれる大河の言葉は、自分が欲しかった答えなのかもしれないと思い、不安と期待を込めて、大河が話してくれるのを待った。
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