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その瞳に…
第36章 ~モノローグ6~
 どうしてそうなったかは解らないが、記憶にはその時の光景が今でもはっきりと思い出される。

 もちろん、酒が抜けた後早百合さんには平謝りしたが、彼女はニッコリ笑って

 『英樹が三人でしようって言ったのだから、気にしないで』

 と何時もと変わらない口調で話していた。

 「早百合さんがまったく気にしてないとは言え、流石にあれは僕も反省しているんだ」

 「ま、あれは俺も早百合も楽しんだんだから良いんだよ」

 苦い顔をする僕に、成滝は飄々とした状態だ。

 「・・・あの人はほんと怖い人だよね。お前の為なら人だって殺しそうだ」

 「まあね~。でも、俺はそんな早百合が大好きよ。あと、お前と早百合はどこと無く似てるしね」

 クスリと微笑む成滝に、僕は苦笑いするしかなかった。

 確かに、彼女を怖いと思う理由は、彼女の愛しかたに共感できる部分があるからだ。

 狂人的な愛。

 相手の為ならば、手段を問わず、どんな風にも愛する。

 けれど、僕と彼女の決定的な違いは、それは相手の為か、自分の為かの違いだ。

 僕は、舞奈を手に入れ、僕のものだけにするのならば、どんな事だってする。

 しかし、早百合さんは、成滝が幸せになる為ならば、どんな事だってする所だ。

 「僕は早百合さんの様に、好きな人が他の人間も愛するのは死んでも嫌だけどね」

 「お前は独占欲の塊だからね~。あの時の舞奈ちゃんに、俺の名前呼ばせるのすら嫌がってたもんな」

 「それは当たり前だ。・・・見れただけ良いとしろ」

 成滝は僕の空になったカップにコーヒーを足しながら、はいはいと軽い返事をする。

 時計を見るとそろそろ正午をさしていた。

 そう言えば軽く腹が減ったな、と思っていると成滝が席をたった。

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