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ただそこに君がいた
第2章 いつからか
『じゃあオレ帰るわ。』
『うん、気をつけてね。』
エッチも不発に終わり、オレは帰ることにした。いくら待ったところで、この雨は止みそうにねーしな。
『あっ…ねぇ、ちょっと!』
『…あ?』
『もぉ〜わ・す・れ・も・の!』
『ああ?あー…』
服の裾を引っ張っられ、振り向いた先に差し出されていたオレの忘れもの。目を瞑り、今か今かと待ちわびているその唇に素早く用を済ませ。続いて伸びてきた腕も受け入れて、オレは彼女を軽く抱きしめた。
『……満足したか?じゃあな。』
『ねぇ待って。ポンポンはぁ?』
『あー?ったく…ほれよ。』
頭をナデナデしてやると、ようやく満面の笑み。
『じゃあな。』
『うん、また明日ー♡』
カノジョって、すこぶる面倒くさい。まあ、エッチは気持ちいーけども。背後でゆっくりと扉が閉まる間、軒下から天を仰いだ。薄暗い天空から降り注ぐ、この世の母なる恵みは、これでもかこれでもかと、オレの気分を叩きへこましてくれる。
『……はぁー…帰って寝るか。』
言いながら俯いて、足元を見やる。既に一度濡れ、今は生乾き状態のズボンの裾にまた一つ溜め息が漏れて。渋々傘を広げたら、びしゃびしゃの雨世界へ歩を浸した。