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ただそこに君がいた
第2章 いつからか
。・*・
「オレ、一夏の髪好き。すげーキレイ。」
「ありがと。春季、あたしね…」。・*・
………チッ。
なんか嫌なこと思い出しちまった。
冷たくてしとしと降り続く陰気な雨は、心まで湿っぽくさせるから嫌いだよ。彼女の家から歩いてしばらく、さっき一夏と出会った交差点に来たオレは周りをグルッと見回した。
(いるわけねぇよな…)
無意識に一夏の姿を探すが、ここにはいるはずがないことをオレはよく分かってる。
(今頃はまだ、道場か…)
二人してよく通ったあの道場。オレ達の薙刀の師範は、そこの一人娘で。現役の頃は、かなり腕の立つ選手として地元ではまあまあな有名人だったとか。そんな彼女が20代で実家を継いだ時、子を持つ親達の間で薙刀は人気のお稽古事になっていた。当時はそれなりに門下生もいて活気があったが、スパルタ指導の賜物とでも言おうか…大半の子供が、小学校を卒業するまでに辞めていった。