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ただそこに君がいた
第2章 いつからか
『一夏っっ!!』
『え、きゃっ…!!』
さしてた傘を放り投げて、一夏を抱きしめた。左手で一夏の肩を、右手で一夏の腰を抱え込んだから、傘なんか掴む手が余っていなかった。
『……誰だよ』
『なっ…春季なの…?!』
『お前を泣かせたのは、どこのどいつだ!』
雨がオレ達を打つ。だけど、一夏の頬に流れてる滴が雨でないこと位、オレには分かった。道端で雨に濡れることよりも、お前がここにいる訳を聞くよりも、何よりもオレには
『言え。どっかに逃げたなら、オレが探してブッ飛ばしてやるから。誰だ、お前を泣かせたのは誰なんだよ!』
一夏の涙が許せなかった。
思えば、一夏を抱きしめたなんてこれが初めてだったかも知れない。どんぐりの背比べだったオレ達の身長は、今や明らかな差を生んでいて。抱きしめた一夏の肩は、折れそうなくらい華奢に感じられた。