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ただそこに君がいた
第2章 いつからか
つーかオレは、剣道がしたかったっつーのに。三歳違いの姉、春花(はるか)とお向かいの一夏、終いには一夏の弟の夏斗(なつと)まで、皆まとめて薙刀の稽古に行かされた。四人の中で…というか道場の中で抜きん出ていた一夏は、小さな頃から師範に目をかけられていた。
(夏斗は一番に、次いでオレも姉ちゃんも辞めたしな。今は一夏だけか…)
微かに思い出す、一夏の袴姿。最後に見たのは中学の───
『……あ?』
長い黒髪の一夏を頭に思い描こうとした矢先、ズブ濡れの袴女が道端に立ち尽くしているのが見えた。
『は…?うそだろ、一夏?!』
わー変な人〜とスルーしそうになったが、待て待て。あの明るい茶髪は、ちょっと前に見たばっかりだ!
『おい、こんなとこで何やって…?!』
道場はどうした?
なんで袴で外に?
持ってた傘は?
なんで手ブラで雨に濡れてる?
そんな数々の疑問は、肩を掴んで振り向かせた途端、頭から吹き飛んだ。