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ただそこに君がいた
第2章 いつからか
ケツのポケットから出した鍵…が、差さらん。悴む手がうっとうしい。くっそ、こんな時に…
『ねぇ、あたし自分ち帰るよ…』
『はあ?そんなズブ濡れでお前、帰れるわけねーだろ。そんなんでただいま〜とか言われてもな、オバさんも夏斗もビビるだけだわ。ウチなら今、姉貴は居ねぇし、母さんもパート。だからま、気にせず風呂だけ入って行けよ。』
言いながらガチャリと手応えがあり、掴んだ細腕をサッと引き上げた。そういや…一夏がオレんち入るのって何年ぶりだか。
姉貴は、大学入ってから一人暮らし。親父は自営だから基本休みはねぇし、母さんも今日みたいな日曜は、時給アップで稼ぎ時だと好んでシフトを入れる。
もはや、昼とも夕方ともつかない中途半端な時間帯。いつも暇で仕方ない家の廊下が、ギッギッと二人分軋んで。久々の来客を、誰にでもなく告げていた。
『とりあえず濡れた服脱げ。湯張りしながらシャワー浴びるぞ。』
びしょびしょのまま脱衣所に入ったオレは、さっさと服を脱ぎ、パンツ一丁で風呂の準備にとりかかった。