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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
一度は本気で好きになった相手だ。その彼と円満に別れたならともかく、ああいった別れをした。
そのあとにラブラブな空気を漂わせなければならないというのは、精神が擦り切れていく。
「ですよねー。私は金輪際三次元の男と付き合う気はないから、杏璃ちゃんみたいな経験することないだろうなー」
「そうなの?」
「うん。彼氏欲しいなーとか言ってたのは、周りに合わせてただけ。ほら私オタクじゃない? それバレちゃうと世間の風当たり厳しいからねぇ」
「解る! 私も言いたいことの半分以上は飲み込んで、自分を守ってきたから」
「杏璃ちゃんもなんだ。私も天然ちゃんを演じるのも大変! 本性出しちゃうと、マシンガンで漫画トークしちゃうから」
「お互い辛いですなぁ」
「ですな。だからさ、なるべくフォローするから! あっちの件も!」
「あっちって……ああ、アレね」
女子でここまで打ち解けれたのは由奈が初めてで、気楽に会話を弾ませられるのを楽しんでいたら、思い出したくないことが脳裏に過り、杏璃の表情が曇る。
アレとはそう、小説のことだ。
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