この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
物覚えも良く、ルルがしでかした失敗を真剣に叱ると、やってはいけないと理解するらしく、二度は繰り返さない。
逆に褒めたことは飽きることなく幾度と繰り返す。その都度大袈裟なほどに褒めてやると、ルルは喉を鳴らして喜ぶものだから、その愛らしさに総一はだんだんと情が湧いてきていた。
仕事中、家に独りで置いてきたルルがどうしているか心配になったり、早いところ仕事を終わらせて帰宅したくなるくらいには、彼女に情が移っていたのだ。
定時を一時間ほど過ぎた頃に仕事が片付いた総一は、自宅近くのスーパーでルルが好みそうな魚を買い込み帰宅した。
玄関のドアを開け「ただいま!」と一人暮らしだった時には考えられない弾んだ声を出す。ルルが嬉しそうに駆けてくる姿を想像すると、顔が自然と緩んでしまう。
しかしどういうわけか、ルルが一向に来る気配がない。
「ルルー? おーい」
まさかいなくなってしまったのかと不安に駆られたのもつかの間、カタンと音がして「にゃぁ」と弱々しい声がした。
どこにいるのか探すまでもなく、トイレのドアが僅かに開いていて、総一が取っ手を掴んで開けると、びしょ濡れになって泣きながらうずくまるルルの姿を認めた。
.