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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
◇◇◇◇
総一がルルと暮らし始めて三日が経った。その間彼女は一度も猫の姿に戻ってはいない。どうやら人の姿が本来の彼女のようだった。
しかし人の姿をとっていても、頭と尾てい骨から伸びる耳と尻尾は消えることなく、気ままな動きをしている。
人と違う部分はそれだけに留まらず、言葉もだった。
「にゃー」とか「うー」とか、所謂猫が発っする音で話すのだ。これには総一は参った。
自分が買った猫が人になったのだけでも参ってしまい、何度となく購入先に電話しても繋がらない。ルルにどういうことか説明を求めようにも、会話が成立しない。
現実世界で起こり得ない事象が起こり混乱するも、ルルを放り出すわけにもいかないし……。もし放り出せば、ルルのような珍しい生物は捕獲されて、下手をすれば研究所行きだ。
彼女の行く末を案じ、仕方なしにルルの世話をしているうち、三日が経ってしまったというわけだ。
その間、解ってきたこともあった。ルルの知能はなかなか高く、まったく人の言葉を解さないわけではなさそうだということだ。
「ごはん」や「トイレ」など、ペットに教えるような簡単な単語などは何度か繰り返しているうちに覚え、しかも発音までした。
これはルルとの生活二日目にして得た大きな収穫だった。
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