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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
「半分は冗談として、場面登場の人数は基本だから覚えておけ。どうしても大人数を出さなきゃストーリーが進行しないってときは、喋らせる人物を特定する。二人、もしくは三人くらいで会話を回すんだ」
「全部冗談にして欲しかった……。んで、他の人はどうさばけばいいの?」
「方法はいくらでもある。黙らせる、速やかに退場させる、泣かせておく、じっと聞き入らせておく……パッと思い付くだけでもこのくらいはあるんだ。自分でも考えろよ」
「春馬が小説書いた方がいい気がしてくるよ」
光陰の如く思い付く春馬に、自信をなくしそうだ。
「俺はストーリーを考えられない。お前の書いたものにケチつけるのが性にもあってる」
「ケチって。褒めようよ! 私、褒めて伸ばされるのが性にあってると思われます!」
「却下プラス否定。俺が褒めると、けなされたくてウズウズするじゃないか」
ウズウズしているわけではないのに。春馬が褒めたりするのは、オリンピックが巡る年月より珍しく、驚いているだけだ。このところ、そのオリンピック以上に珍しいことが立て続けに起こっているのに、本気で天変地異を心配してしまう。
「次はある程度纏まるか、行き詰ったら連絡してこい。毎日のように呼びつけられるのはごめんだからな」
「はーい」
そう言って別れた翌日、早々に杏璃は行き詰ることになった。
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