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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
火花の中心にいる杏璃は、いっそ卒倒でもしてフェイドアウトしたくなる。
高温の青い炎を燃やす男たちの熱。肌を焼く照り付ける太陽と照り返すコンクリートの熱。
それらに本気でくらくらとし、気を失ってもいいか……なんて考える杏璃に、不意に何かが降りてきた。
(この状況って……小説に使えないかな?)
相変わらずぐいぐいと引っ張られるが、腕の痛みを押し退けて妄想に思考が浸っていく。
――総一のルルへの想いがはっきりとしなかった。だがもし、何かのきっかけで動くとしたら?
ルルの知り合いの男が突如現れて、今の杏璃のように総一はルルをその男と取り合う状況に陥ったなら、総一は彼女への気持ちを認識するんじゃなかろうか。
何も傍にいるからという理由だけで想いを心得るわけではないし、ライバルの出現で焦る自分にルルへの気持ちを自覚していく。
この流れならば結末への伏線にもなるし――。
「キミさぁ、いい加減手を放してくんないかなぁ? 僕が杏璃と話してたの! つまりキミはお邪魔ってわけ。解る?」
「悪いがこっちが先約だ。杏璃は俺の家に来るために出た」
「はぁ? キミんちに!? さっきからずっと思ってたけど、杏璃とどういう関係なのさ」
そんなやり取りを引き裂く杏璃の叫びがこだまする。
「き……きたぁぁぁぁ!」
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