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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?




 しかし杏璃は逆方向からも引っ張られて動けなくなる。見ると司がもう一方の腕を掴んでいた。


「おい。まだ僕と杏璃の話が終わってないんだけど」


「ぐおっ」


 ぐいっと司に引っ張られ、杏璃の身体が不安定に傾く。


「おや? 変態ストーカーは他人に触るのが嫌なんじゃなかったか?」


「うおっ」


 逆方向からも春馬に引かれ、今度はそちら側に身体が傾く。


 ぐいぐいと両方向から引っ張られ、杏璃は操り人形のように不安定に揺らめいてしまう。


「杏璃にはすこーし免疫があるからいいの。それにあとで手をしこたま洗うし」


「だったら今すぐ洗ってきたらどうだ? それでとっとと帰ってご高尚な小説で、ソロ活動に勤しめ」


 頭上で火花を散らすのを感じつつ、杏璃は目を白黒させる。


(な……なんなの、この状況は!?)


 こっちに引っ張られ、あっちに引っ張られてよろめきながら、杏璃のはくはくとさせる口からは言葉にならない声が洩れるだけ。


 だが男たちの口擊は苛烈を増す。


「僕の趣味にケチつける気? だったら黙っちゃいないよ。キミみたいな低俗な人間には理解出来ないだろうけど、文字から想像を駆り立てさせる神のような人たちがこの世には存在するんだよ」


「どう受け取ったらケチつけてると思うんだが。別にお前の趣味どうこうは否定しないし興味もない。だがこれだけは言っておく。自分以外の人間に否定的なお前は欠陥がある。そんな奴に低俗と言われても、嘲笑しか出てこん」






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