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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
杏璃が家へと駆けこんですぐ、春馬も入ってきて、玄関の鍵をかけた。
「あれ!? なんで!?」
サンダルのホックを荒っぽく外す杏璃は、訝しんで春馬を見た。
「なんでじゃない。その手にぶら下げてるもの、俺のだろ」
「そうだった!」
はいっと渡し、部屋へ駆け上がる杏璃の後ろを春馬は付いてくる。
「何してんの?」
「ここで食べてっちゃいけないのか?」
「いや、いいけど。でも私……」
「解ってる。執筆するんだろ? 適当に帰るから気にするな」
「そう? あ、でも今私の部屋の冷房壊れてて効かないから暑いよ」
「気遣いはいいから執筆に集中しろ」
「あいよっ!」
蒸し風呂状態の部屋に入り、机に向かう。
司がどうして自分に気持ちを向けなかったのか。その理由は解決されてはいないが、総一の方は解決されたに近い。
何日も起動させていなかったパソコンの電源をつけ、杏璃は溢れてきた物語と文字を叩きつけた。
一方春馬は杏璃の手作りカップケーキを口に運びつつ、開け放たれる窓から外を見下ろしていた。
その眼光は鋭く光り、油断ならない視線を辺りに這わせ続けたのだった。
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