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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
玄関の扉を閉めた直後、総一はルルを抱きすくめる。というより、腕の中に囲い込んだと言った方が正解だ。
「ソーイチ……?」
「ルル、お願い。どこにも行かないで」
自分でも聞いたことのないような切実さが声色に滲んでいた。
仕事で上司から嫌味を言われても、部下から見下されても、同僚から残業を押し付けられても。
ルルの待つこの小さな二人だけの城に帰ってこれば、嫌なことなんて全部吹き飛んでしまった。
もう総一の人生に、ルルのいない世界は考えられなかった。
総一の胸を締め付ける切なさ。これが恋でなくて、何という名前で呼ぼうか。
彼女は人間ではない。けれどそんなことどうだっていい。ルルはルルだ。それ以外の何物でもなければ、それがすべてでいいじゃないか。
「ソーイチ? ルル、ずっといるよ?」
彼女の手が総一の髪を撫でる。優しく労わる手付きに涙が零れそうだ。
総一は押し殺してきた感情の蓋が開く音を、鼓膜のもっと奥で聞いた気がした。
「ルル……。僕のものにしていい?」
頭を撫でていた彼女の手を取り、優しく握る。
「ルル、ソーイチのだよ」
鼻先に小さくて可愛らしい口付けをされ、総一は彼女を抱く決意を固めた。
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