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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
杏璃は『猫彼女の観察日記』序盤の一番の山場である、総一とルルが初めて結ばれる描写をどうにか書き上げた。
だが春馬から「ここがなってない」だの「描写が甘い」だの文句をつけられて、何度も書き直す羽目になっていた。
それでもようやく春馬にOKをもらえたのは一昨日のこと。
気が抜けた杏璃は、昨日は羽を伸ばしに由奈を誘って買い物へ行った。夕飯も一緒に食べることにして、帰宅したのは午前0時の門限間近。
そこから買った服で一人ファッションショーをしてみたり、買うだけ買って見れていなかったファッション誌を捲ったりして過ごしているうち、寝たのは朝方近くだった。
壊れていた冷房はやっと修理され、過ごしやすい気温の中での睡眠はどこまでも貪りたくなる。
杏璃が夢も見ずに幸せな顔で規則的な寝息を立てていると、唐突に衝撃が額に走った。
「――ったぁ……」
呻いて、のろのろと起き上がり、まだ開ききらない目で周りを見遣る。
「なに……? なにごとー?」
自分に起こった出来事が理解出来ず、寝惚け眼をしばたかせた。
するとベッドサイドに人影を見付ける。
「んんっ? 春馬……?」
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