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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




 春馬がなぜ部屋にいるのか……。いや、いるはずない。


 まだ自分は夢を見ているのか? だが夢にしてはヒリつく額がいやにリアルだ。


 杏璃は目を擦り、春馬の幻覚を見てみる。とてつもなく不機嫌そうな顔で自分を見下ろしている彼。眼鏡越しの目が眇められている。


「んー…………んんんっ?」


 夢か現実か。考えているうちに意識が明瞭になってくる。


「え? これ……夢じゃないの?」


「夢かどうか確かめさせてやろう」


 言うや否や放たれるデコピン。ゴッと重々しい音を立てて弾かれる。


「あっだーー!」


 強烈すぎる激痛に、眠気が一気に吹き飛んだ。


「痛い! 何で!? えっ!? すごい痛いっ!! おでこ……私のおでこあるよね!?」


 額が粉砕されたのではと心配になる痛み。春馬が部屋にいることや、悪さをしていないのに打撃を受けた混乱で、支離滅裂な言動になる。


「お前んちは施錠しないルールでもあるのか? 泥棒ようこそ週間か? あぁ!?」


「へっ? え……鍵開いてたの? で、勝手に入ってきたの?」


 どこから突っ込めばいいのか。寝起きで頭の回転が鈍っていて、わけが解らなかった。







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