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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉
――部屋に一組の男女がいた。二人とも一様に、驚きを隠せない様子で。
だがどちらかというと、女の方が男のそれより勝っているようだ。
女は直前までその愛らしくも美しい顔に湛えていただろう笑みを、比喩などではなく、まさに言葉の意味そのままに凍りつかせ、視線の先にある物に双眸を奪われていた。
壁一面に詰め込まれる“それ”。そしてそこに連なる解読不可能――否、解読したくないと脳が全力で訴える文字の羅列。
けれど訴えは些末なことだと言わんばかりに、猛烈な勢いで情報を処理していく知能。努力という名の愚かな行為が招いた惨劇だろう。
もし、彼女がもっと愚鈍で、低い知能しか持ち合わせていなかったなら。
見開いた瞳の先にある物を理解出来ず、「ふぅん」の一言で終わっていたかもしれないのに。
だがこの後に待ち受けていたもっと酷い仕打ちに比べたら、それこそその光景は些末なことだったのだと、彼女はすぐに思い知ることとなった――。
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