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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
朝に目が覚めるとモーニングメールを送る。その後、彼が好みそうな服を選ぶ。朝食を食べてから出掛け、駅で待ち合わせる。
それら日常のルーティンとなっていた事柄は、もう永遠に来ない。
一夜明けた翌朝、改めて実感すると杏璃は虚しさに襲われる。
それに加えて泣き腫らした瞼が重たい。一晩中、無理矢理小説を読んでいた頭が重たい。
これから司と顔を合わせると思うと気が重たいのに、身体の重みまで背負わなければならず、無理にでも少し寝れば良かったと後悔していた。
しかしいつまでもベッドの中で過ごしているわけにもいかず、身体に鞭打って起き上がる。
司と電車で鉢合わせるのは御免被りたい。身支度の前に手帳に挟んである電車のダイアを確認して、その時間に合わせて準備を進めた。
時間に余裕を持って行動するのを常としている杏璃。だが今日に限ってはそうもいかなかった。目の腫れを取るのに手間取ったのだ。
昨晩も蒸しタオルと氷入りの袋で対処したのだが、鏡に映る自分を凝視するとまだ腫れているような気がしてならなかった。
泣いて疲れ切った顔をあの男には見せたくない。酷い仕打ちを受けた者の、せめてもの意地が働き、四苦八苦の末に満足とまではいかないが、見栄えが悪くない程度には顔を仕上げ、負けてなるものかと意気込んで家を出た。
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