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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動




 キャンパスに到着した杏璃が構内の喧騒に紛れて、適当に時間を潰して講義の時間を待っていると。


「おはよう、杏璃ちゃん」


 ボブカットの小柄な可愛い女性が声を掛けてきた。彼女は大学で知り合った友人の一人で、三浦由菜〈ミウラ ユナ〉と言った。


「由菜ちゃんおはよう」


「あれ? 今日は一人?」


「うん、ちょっと……」


 杏璃と司が構内で常に行動を共にしているのは、友人なら誰でも知っている。一緒にいないほうが、逆に不自然なくらいに。


 そのためこういった質問は予想をしていた。しかしながら本当のことを言えるはずもなく、言葉を濁すだけ。


 それで察して欲しいものだが、由菜は少々天然気質なところがあり、両手を小気味良い音を鳴らして合わせた。


「あっ、もしかして……昨日二人して休んだのと関係あったりする?」


 内容だけなら鋭い、と言ってあげたい。だが明るいその表情が伴っていないため、杏璃たちが別れたと思ってはいないということだけは解った。


「うーん、どうだろう」


 下手なことを言えば首を絞めるだけだ。濁し通すしかない。






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