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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動



◇◇◇◇


「はぁ……。これを私が書くんだよな……」


 ベッドでうつ伏せに寝転がる杏璃は『義父と禁断』という、何とも安直なタイトルの本を閉じる。


 一度読んではいたその本を、勉強とアイデアを求めて再読中だったのだが、読んでも読んでも書ける気が到底湧いてこない。


 書くこと自体は杏璃に躊躇はなかった。夏休み前の屈辱的な日々を思い起こすだけで、活火山のように復讐心が噴気を昇らせ、いつ爆発してもおかしくはない状態なのだから。


 僅かでも司に一矢報いる可能性があるならば、官能小説を書ききる意義を見出せるというものだ。


 しかしキスすら触れる程度しか経験がない杏璃に、本当に官能描写を表現しきることができるのかが疑問だ。


 だからこうして何度も読んでは想像を膨らませ、物語に沿ったシチュエーションや表現を勉強しているわけなのだが。


「気持ちいいとかよくわっかんないんだよぉ! もう~~っ!!」


 処女故に悩み悶えている杏璃であるのだ。


「こうしてても仕方ないか……」


 ごろり、ごろりと幾度か寝返りをうって、杏璃は這いずってベッドから机へと向かったのである。





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