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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
杏璃は本棚を一通り見て回った。一架の本棚には大判の分厚い本が詰まっていて、作家の五十音順に並んでいた。
別の本棚には大判だが薄い本が並んでいる。本屋では見掛けなかった類の本だ。
「これって他のとは違うみたいだね」
「それはね、同人誌だよ」
「同人誌?」
「そう。二次創作って解る?」
「あー、うん。なんとなく」
二次創作とは確か原作者とは別人が描いた創作物、という認識だ。
「へぇ。由奈ちゃんって同人誌も好きなんだ」
「むしろこっちが本命! あとで案内するけど、普通の漫画本の部屋もあってね。大っ好きな漫画の同人誌は、手に入るだけ買い漁ってるの!!」
その漫画のどこが好きか。どこに胸キュンするか。事細かに話し出す由奈。
杏璃は彼女の弾丸のような語り口に、しまったと思った。下手に話題を広げてしまった。
杏璃も漫画やアニメは嫌いな方ではないが、他者の熱すぎる情熱は時として人を冷めさせるものだ。
由奈の饒舌を止めるタイミングを完全に見失った杏璃は、いつの間にか同人誌即売会とやらにも一緒に行くと約束を取り付けられていた。頷かないと帰してもらえそうになかったとも言う。
そうして由奈から数冊借りて帰る頃には、どっぷりと日が暮れていたのだった。
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