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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
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「随分と変化球できたな」
杏璃がノートに書き綴ったプロットを読んだ春馬は、渋い顔で応えた。
「ダメ……かな?」
「いや、そんなことはないけどな。杏璃がこれでいきたいならいいんじゃないのか」
「そっか! 他にも考えてはみたんだけどね。それが一番しっくりくるっていうか、妄想が膨らむかなーって」
「ああ。インスピレーションは大事だ。物語を紡ぐうえで、作家自身が物語を好きになれなくちゃ、最後まで書ききれないだろうから」
「おお! 珍しく春馬が毒舌言わない!」
「ほぉ? けなして欲しいならいくらでもけなしてやるぞ?」
「謹んでお断りします!」
「だったら無駄口叩くな。プロット出したくらいで、やりきった顔するな。大変なのはこっからなんだぞ。解ってるのか?」
「解ってるよぉ。エロの資料もバッチリゲットして、アクロバティックな体位も頭に入ってるから!」
親指を立ててにかりと歯を見せると、春馬は何とも言い難い表情で、半目を向けてきた。
「ん? 何その顔。あ、解った! 春馬も本貸して欲しいんでしょ!? 変な汁飛ばさないって約束するなら貸してもいっだーーぁ!」
春馬の放ったデコピンがもたらす鈍い音がおでこから走った。
「無駄口、叩くな。聞こえたか?」
「……あい。さぁせぇん」
おでこを手で擦り、杏璃は涙目で春馬を睨んだ。
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