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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
それから三日目の夜のことだ。仕事から帰り、面白くもないテレビを何となく眺めている総一の家のチャイムが鳴ったのは。
「愛ペット宅配便でーす」
インターフォンに映るのは、ハットを目深に被った若い男だった。笑っている口許が、不自然なほどに口角が上がっている。
「愛ペット宅配便……? 聞いたことないなぁ」
ペット配達専門の業者だろうか?
一瞬だけ首を捻る総一だが、あまり深くは考えずに出迎えた。
宅配業者の男は布が被せられたゲージを抱えて、玄関先に立っていた。総一が姿を見せると。
「鈴木総一さんでお間違いないですか?」
「あ、はい」
一応身分を証明する物を見せた方がいいだろうかと思ったが、男は名前を聞いただけで話を続ける。
「でしたらまず商品を確認してもらえますか? クーリングオフは効きませんので。こちらでよろしければ契約書を見てもらって、サインをお願いします」
男は丁寧にゲージを床へ置く。布を取ると、不安そうに佇む白い猫が現れた。
白くてフワフワの毛。硝子玉のような透き通った青い瞳。忙しなく動く耳はピンと上向き、ゆらゆらと揺らめく尻尾は長くて細い。
嗚呼……人間は小さくて愛らしい動物を前にすると、なんて無力なのだろう。
総一の目尻は垂れ下がり、口許は自然と緩み、今すぐにでも撫で回したい衝動に支配される。
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