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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
「えっとー……。あとは何か気を付けることとかあったりする?」
春馬は顎に指をかける。暫し考えて。
「読者の想像を裏切り、期待に応えること――かな」
「難しいこと言うね」
首を傾げる杏璃は、その意味を飲み込もうと頭を働かせる。
「難しく考える必要はない。そのままに捉えろ」
「うーん……。ありふれた題材だからこそ、想像もつかない展開を考えろってこと……?」
「そんなところだ。例えばだが、この総一とルルが肉体関係に及ぶのは、想像に難くないだろ?」
「だね」
「で、お前のプロット通りにいくと、わりと早い段階で二人は相思相愛になる、と。ここまでは読者の期待にも想像にも応えている」
「ふんふん」
「つまり捻りがない」
「うう……」
物語には少なからずスパイスが必要。味付け次第では良作にも駄作にもなり得る。
頭では理解していても、実際に書くとなると勝手が違うのだ。
「ま、現時点で難しくは考えず、お前のやりたいようにやってみろ」
「それが難しいんだってば」
首を落とす杏璃を春馬は目を眇め眺めてから、再度眼鏡を押し上げた。
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