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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
杏璃は苛立ちと焦燥と無念と、そして少しばかりの胸の痛みを抱えて暫く放心していた。
なぜああも春馬が怒ったのかがまったく不明だった。
エロ小説をエロ小説と言って何が悪い?
それに自分と司が同類だって? その台詞だけは聞き捨てならない。あんな最低の男と一緒にしないで欲しい。
「春馬の……バカ」
小さく悪態を零してみても、胸のモヤモヤは積もったまま。
だけど春馬と喧嘩なんて毎度のこと。どうせ数日もすれば、いつものようにケロっとして、お互い何事もなかったようにまた顔を突き合わせるのだろう。
そう考えて数日過ごしてみたが、春馬からの連絡は来なかった。
そればかりか、杏璃の電話にも出なければ、メールへの返信もない。
こんなことは初めてで、杏璃はようやく事態の大きさを悟る。
春馬が降りると言ったのは本気で、自分は見捨てられたのだと。
いや、それだけならいい。もしやもう自分とは友達もやめるのでは? と考えだしたら、杏璃は妙な不安に襲われたのだった。
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