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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら




「春馬? 急にどうしちゃったの?」


 春馬が杏璃に怒るのはよくあることだ。デコピンやアイアンクローなんてしょっちゅうされてきた。


 だが春馬の怒りは、言うなればフリみたいなもの。友達だからこその悪態と軽口。


 しかし今の春馬はフリなどではない。長年の付き合いで、杏璃には伝わっていた。


「“たかだかエロ小説”? お前、ちゃんと読んだのか? 俺もこうなるまで官能小説を馬鹿にしてたのは否定しない。低俗な読み物だと思ってきた。だから一切読まなかった。けど読んでみて自分の間違いに気付いた。お前は? お前だって俺と同じ本を読んだんだよな? 何も感じなかったのか? 読み取れなかったのか?」


「それは……」


「だろうな。その様子じゃ、何も解ってない」


 杏璃が口籠ると、すぐさま心底呆れた声で春馬は鼻で笑う。


「流石、ああいう男と付き合ってただけあるよ」


「ちょ、それどういう意味!?」


「同類ってこと。……じゃあな。勝手に一人で復讐とやらをやれ。俺はここで降りる」


 春馬は言うが早いか、さっさと杏璃の部屋を出て行ってしまった。








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