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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
青々とした緑。せせらぐ川。見渡す限りの――大自然。
杏璃は虫よけスプレーと日焼け止めクリームをたっぷりと塗り込んだ肌を太陽に晒し、せっせとバーベキューの準備に勤しんでいた。
というのも大学のサークルの集まりで、一泊二日のキャンプに来ているのだ。
サークル活動の出席は強制ではないけれど、一年生は先輩からの無言の圧力に大体が屈するという。
杏璃は培ってきた外面の良さで断ろうとしていた矢先、司が「僕も杏璃も参加します」と言い、断れない空気を作り出してしまった。
元より杏璃はこういったイベントは嫌いではない。大勢で集まって騒ぐ。寧ろ好きな類のイベントだ。
だが司の本性を知り、極力彼と共に行動するだろうことになるイベントは避けたかったので、夏休み直前に部長から参加の意思を聞かれた際には断ろうと決めていた。
それなのに司が先手を打ってきたのだ。
しかし解せない。司は極度の潔癖で、汗水掻くようなことはしたくないはず。
司が参加する理由を聞くついでに、勝手に杏璃の行動まで決めた抗議をしようとも思った。だが彼と余分な会話をしたくなくて、今日の今日まで彼の不可解な行動を聞けないまま来てしまっていた。
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