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want to be ...【短編集】
第3章 甘い熱
「もー、それは風邪ひいちゃうよ!
ほらちゃんと寝てて!今お粥作ってくるから。
また寝てなかったら怒るからね、2人共!」
そう言って寝室を出て行った美咲さんを力なく見つめるあたしと…早速ベッドを抜けようとする蒼汰。
結局揃って風邪を引いたあたし達を、美咲さんが看病しに来てくれた。
けど…
「…っ、あいつ、妊婦なんだぞ…?
だめだろ、もう臨月入ってんのに…っはぁ。
料理なんてさせられねぇ…」
「ん、ど…う感。…てか蒼汰、
大事なクライアント、は…どうしたの?」
「…あ?同僚に頼んだよ…。
俺じゃねぇとダメって訳じゃないから、…っはぁ。
俺の代わりに2人でやって貰う事に…、いてっ」
40℃近く熱があるあたし達。
それでも、大樹さんの子供がお腹にいて既に臨月に入ってる美咲さんに、絶対迷惑かけられない。
「っ美咲…に、なんかあったら俺、大樹に殺される…
帰さねぇ…と、○%〒☆□△…」
もう何を言ってるのか分からない。
ベッドから降りて、まともに歩けないから床に這いつくばるようにして寝室の入り口を目指してるあたし達。
おでこに貼って貰った熱さまシートが床に落ちる。
「…っはぁ、歩けるって、凄ぇな…」
「ほんとに、っね…。…っ、はぁ…、遠い…」
「たった、数歩分、…はぁ。なのにな…」
「はぁ、はぁ、…っうぅ…も…、無理…」
ベッドから降りてから1歩分も動いてないのに。
あたしはカーペットが敷かれた床にぱたんと倒れた。
「杏奈…!…っはぁ、や…べ、俺もやばい…」
身体が重い。
絶対熱上がった気がする…
蒼汰の腕がぼやけた視界に見えて、身体に腕を回される。
「あつ…っ、…あぁ、ごめん無理…」
あたしを抱き上げてくれようとしたのか、持ち上げる感覚がしたけど、すぐにあたしの隣に倒れてしまった蒼汰。
やばい…ほんとに、重症だ…
すると。
「っきゃー!?2人共っ!!」
美咲さんの声が聞こえて、肩を揺さぶられる感覚がする。
「杏奈ちゃん!蒼汰!」
あ…ダメです、美咲さん…
身体に負担が…
隣の蒼汰は既に微動だにしない。
ふわふわと上っていく感覚がして。
あたしは意識を手離した。