この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
want to be ...【短編集】
第3章 甘い熱
***
腕まくりして恐ろしい笑顔を浮かべてる大樹を、布団から鼻から上だけを出してる俺と杏奈は恐る恐る見つめる。
「…お前ら」
掠れた甘い、でも鋭い声に、隣に寝てる杏奈が小さく身体を震わせる。
「美咲の身体を気遣ってくれたくだりは分かった…
けどな、それでお前らの熱が上がったら
意味ねーんだよ。気遣いは有り難いが…、
お前ら患者だろうが。大人しく寝てろ、バカどもが」
「ごめんなさい…」
2人で謝り、杏奈はもぞもぞと顔を布団の中に隠していく。
午前中だけ出勤し、すぐに来てくれたらしい大樹。
杏奈と俺をベッドに運んでくれたらしく…なんかもう、感謝する前に恥ずかしくて大樹の顔をまともに見れない。
たぶん美咲が呼んでくれたんだろうな…
「大樹…、ありがとう」
「…さっさと治せ」
「…うん」
ツンデレご馳走さまです…
小さな声で「かっこいい…」と呟いてる杏奈は、大樹のスーツ姿の事を言ってるんだろうか。
「…ほら、美咲。立ってると身体に負担かかるだろ、
座ってな?」
「うん」
うわぁ…
美咲さんを見つめる大樹さんの表情。
こっちが恥ずかしくなるくらい甘々で優しい。
もう、好きで好きで堪らない、って感じの、美咲さんに心の全てを預けてる感じの…
それに大樹さんのスーツ姿、やっぱりかっこいい…
男の人って、スーツ映えする人多いよね。
大樹さんは何か…、別格だ。
あ、蒼汰もね!
超がつくイケメンで細身で長身で…あぁもう、きゅんきゅんするー…!
「…杏奈、顔赤ぇぞ。大樹見て熱上がったか?」
「…えっ!?あ、う…」
何だか機嫌悪そうな蒼汰。
蒼汰を見つめると、つんとそっぽを向かれるけど、さっきから布団の中で繋いでる手にはぎゅっと力を入れられる。
「美咲さんと大樹さんが来てくれたから
絶対すぐ治るねあたし達」
「…ふん」
あたしに背を向けて、もぞもぞと身体を布団の中に隠していく蒼汰。
…むぅ。
後ろから美咲さんを抱き締め、大きくなったお腹に触れて恐ろしい程優しい笑顔を浮かべてる大樹さんに見とれながら、もぞもぞと身体を動かし、手は繋いだまま蒼汰の身体にぴったりと抱き着く。
…蒼汰の、においだ。