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want to be ...【短編集】
第1章 カナヅチ杏奈
濡れた髪を掻き上げて笑ってる蒼汰がいて、思わずなり振り構わずぎゅうっと抱き着いてしまった。
うぅ…浮き輪、邪魔だ…
蒼汰の胸板に顔をうずめるあたしに、蒼汰は髪を優しく撫でてくれる。
「いなくなったかと思った?」
こくこく。
「置いてかれたと思った?」
こく…
「見捨てられたかと思った?」
………………こくり。
「有り得ないから」
抱き着いてるあたしの髪にポタポタと垂れる、濡れた蒼汰の髪からの雫。
「俺が杏奈を見捨てるなんて有り得ないから」
優しい声のトーンに、更に涙が溢れる。
「ちょっと懲らしめようと思って。
杏奈…ツンデレ可愛すぎだし。
他の男にナンパされてるし。…びっくりした?」
こくこく!
大きく頷いてぎゅうっと強く抱き着くと、
「ごめんごめん」
とあたしの体を抱き寄せて謝る蒼汰。
「やー…でも。ツンデレ杏奈が見れて、
水着姿の杏奈も拝めて。今日幸せな日だったわ」
…あたしもだよ。
蒼汰の胸板…相変わらず綺麗だったし、ナンパからも助けてくれたし、…その。
岩陰でエッチしたのも…そ、蒼汰とだから、いいや。
「…よし。杏奈の足が届く所で泳ぐ練習するか」
「うんっ」
頷いて蒼汰に掴まり、浅瀬に向かってた…その時。
…あれ?
な、何だか、視界がおかしい。
体が浮き上がって、蒼汰との距離が…
ざっぱーん!
後ろから来た、大きな波。
その波に乗ってしまい、全く予測してなかったあたしは、波の勢いで体から浮き輪が離れてしまった。
「〜っ!」
パニックになってバタバタと手を動かすと、片手をがっしりと掴まれて引き寄せられる。
大きな胸に閉じ込められて、ようやくその腕が蒼汰のものだと気付く。
「〜っ!っはぁ、はぁ…っぁ…」
「…っ、ビビったな…」
「…う、うぅ…も、海嫌っ…」
「んな事言うなよ…俺と頑張って慣れよう?」
「ふぅう…」
こくこくと頷き、ぎゅううっと俺に抱き着く杏奈。
何か…さ、思い出した。
かなり前に美咲と話してて、へぇ〜ってなった事…こいつにしたら、どんな反応見せてくれんのかな。
俺にくっついて離れようとしない杏奈。