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運命という名の恋
第3章 の
梅雨も真っ盛りの土曜日。
珍しく傘マークがない週末だった。

お昼少し前に村松さんとコンクール会場の入り口で待ち合わせ
ちょうど午前のジュニアの部の観客と入れ違うときに
入場して、予定通りいい席を確保できた。

小野寺の演奏は、想像を遥かに超えていた―――

これは、ひと波乱あるな。
そう確信して、小野寺の本気の演奏を聴けた事に満足して
村松さんと別れて先に会場を後にした。

上杉さんとの待ち合わせにギリギリで着くと
いつもよりドレスアップした上杉さんはいつもより可愛くて。
「かわいいよ」
柄にもなく、伝えたくなってそう素直に伝えれば
ほんの少し赤くなって「ありがとう」と答えた。

まるで本当のカップルのように寄り添って目的地に着けば
音大の卒業生の数名でグループを組んでのコンサートだった。

小野寺の演奏でガツンと疲れた頭に心地のいい演奏会で、
今日は久しぶりにクラシックに縁のある1日だったな。
と思っていたら
「クラシック、退屈でしたか?」
と聞いてきた。

ああ、俺がクラシックが好きだって知らないのか。
中学まで本気でピアノをやってきたことも
高校は吹奏楽で大会に出ていたことも話してないか。

彼氏のフリだとは言いながら
どこまで踏み込んで話をしていいのか。
どこまで彼女は俺のことが知りたいのか。
お互いに何も知らないんだ。
ふとそんなことを思った。
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