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溺れる恋は藁をも掴む
第11章 color
「有り難う。
俺、腹空いてたんだ」

そう返してくれたのが誠治さん。

「お代わりして下さいね。
私がよそりますから」

「その時はお願いね。
華さん。
華ちゃんって呼んでいいかな?
その方が堅苦しくないし」

「えっ!あっ、はい」

名前を言われてびっくりした。

「おい!沢口、ベラベラ喋ってないで、
華ちゃんがみんなに取り皿に取ってくれたんだから、ちゃんとお礼言おうな」

「あっ!わりぃわりぃ。
華ちゃん有り難うね。
いやーぁ、綺麗な前島建設さんの女性が、
目の前に5人も居たら、舞い上がりますよー」
などと社交辞令込みの言い訳をしながら、
沢口も照れ隠しで笑いながら、お礼を言ってきた。


「ダメだな。
こういう気遣いをされたらさ、
すぐ気づけよ!
ちゃんとお礼も言うのも礼儀だろ」

誠治さんは沢口をからかうように、
笑いながら、場を崩さないように言ってくれたんだ。

それからみんなに口々にお礼を言われた。

これって、
私には別に特別な事ではなく、
いつもの事だし、
こんな風に言って貰えたのも、
初めてだった。




その時かな?
引き立て役でもいいから、
この席に居て良かったと思えたのは。


それと…
そんな誠治さんにドキッとしたんだ。
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