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溺れる恋は藁をも掴む
第14章 二十歳の恋
可愛いって言われると嬉しくもなるが、
誠治さんの言葉は、
それ以外に意味深な感じにも取れた。



『あのね、
誠治さん。

何でも手に入れちゃう子はさ、
私と違って可愛いからさ。
可愛いから、
その可愛さで周りが許すんだよ。

私が我慢強いんじゃないよ?
そういう我儘を許して貰えるキャラじゃないからよ』


私は心の中で言えない言葉を呟く。


「妹さん、
可愛いですものね」

「俺に似てないよね?」
誠治さんは笑う。

どう答えていいか分からない…

「そうですかね?」
私ははぐらかした。


「うん。
よく似てないって言われるんだ。
華ちゃんはお姉さんに似てる?」


「体形は似てないですが、
どことなく似てますよ。
姉に全部いいとこ持っていかれたみたいですけど」

「華ちゃん、
そんな事ないと思うよ?
そんなに卑下しないで大丈夫だよ。
華ちゃんには華ちゃんの良さがあるから。
俺は華ちゃんと居ると、
不思議な安心感みたいなもん感じるけどな」

「そんな風に言われた事ないから、
嬉しいです。
私、癒し系クマに似てますからね。
多分、ソコに安心感あるんじゃないですか?」


ギャグにすればコンプレックスも和らいだ。

安心感でも何でもいい。
この時間がずっと続けばいいと願ってしまった。


実際には、冗談混じりであっても、
私とお姉ちゃんはよく比べられた。

『いいところは、お姉ちゃんにみんな持ってかれたね』
って。

そんな時は傷つきながらも、
その言葉を受け入れていた。
そしてどんどん卑屈になった。




ハンバーグのお店を出て、
妹さんの誕生日プレゼントを探しに歩き出す。

ランチは約束通り、
誠治さんがご馳走してくれた。

私がお礼を言うと、

「気にしないで。
華ちゃんの時間を割いてくれてるんだから、
当たり前だよ」
って笑う誠治さん。


「プレゼント選びとことん付き合いますね」
私はお言葉に甘えた。


クマグッズだけでも、
十分だと思うけど、
それとは別に何かを贈りたいなんて、
やっぱり、大事にされているんだね。


妹さん。


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